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第十二章《 嵐の終息 》

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 果てしなく続く漆黒の闇。
 その空間に光の壁が浮き出していた。
「嵐が止んだ……」
 声の主がその壁にそっと手を触れると、壁の中にリンセンテートス城の姿が浮かび上がった。
 青い空のもと、砂に覆われたかつては白亜の城が、心地よさげに静かな風に吹かれている。
「この何もない小さな国は、人を引きつける興味深い舞台だな」
 クスクスと笑いう声が響き、壁の光を受けて闇の中に美しい若者の姿が浮かび上がる。
「ですが……気がかりなことも」
 若者のそばで、闇そのもののように動かない黒装束の魔道士が、ひざまづいたまま主に声をかけた。
「時は来るものだ」
 若者の魅惑的な声が優しく応える。
「シルク・トトゥがビアンに呼びかける……次に、目を覚ますのは我が仇敵……。役者が揃わなくては、幕はあがらないだろう、イルアド」
「ですが……暴走の気配がございます」
「心配性だな……」
 陶酔したような美しい瞳が、極上のほほ笑みを浮かべた。
 陶器のような白い肌に、ほんのりと血の色が浮かび上がる。
「〈ユナセプラ〉の時が訪れる……それを知っているものだけが、この世界を導くことができるのだよ。名前だけの亡霊たちが、どれほど蘇ったところで、我に対治できるものはどこにもいない……愚かな目覚めだ」
「はい」
 ゆっくりと長い睫を閉じ、闇に抱きかかえられるように、若者はうっとりとささやいた。
「もうすぐだ……もうすぐ……光の世界がこの身を招きよせる……」
 妖しく濡れた紅い唇が、魅力的な笑みをかたどった。

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