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25章 〈 エピソード3 〉

 レンは、ケイリー・デイジーと六カ国首相の写真を自分のカメラに収め、新聞各社に配信したことで、ササヤマと共に一躍時の人となった。
 しかも、その週にドラマにゲスト出演したこともあり、カメラマンとしての評価と、ドラマでの光る役者ぶりとが世間の注目をこれまで以上に集めた。
 スクープをものにしたことで、各国から賞を送りたいという申し出が殺到したのだが、レンとササヤマはそれらすべてを断った。
「あの場にいられた幸運は、俺の実力じゃない。賞は自分でもぎ取る」
 レンはトモヤにそう言った。
「じゃないと胸を張って〈デイズ〉にも入れない。なにより、ラグに認められないしな」
 ラグが「リーダー」と呼んだ男を思い浮かべる。
 あのユウを見上げる時のラグの安心しきった表情を見たとき、うらやましいと本気で思った。
 自分とそう変わらぬ年齢のはずのユウに対して、万全の信頼を寄せているモノの正体は何故なのだろうか、と考えずにはいられない。
 ラグだけではなく、他の子供達も一様に同じ目を向けていた。
 ユウをからかいながら、一見バカにした言動や態度をとりながらも、深い部分で寄せられている信頼、いや絆を見たような思いがした。
 正直、ユウ・マサオカという人間は、ラグやルアシらのような非凡さを感じとることは皆無といってよかった。
 逆に、離れてしまえば忘却の彼方となってしまう存在感のなさ。
 うらやましいと思いながら、常に意識し続けなければきっと次に出遭ったとしても覚えていないかもしれない存在の薄さ。
 だが逆にそれは、レンに、いつしかラグの存在さえ忘れかねてしまいかねない奇妙な恐怖を覚えさせた。
 そう、ラグが最も若くして選ばれた〈デイズ〉のメンバーでありながら、その存在に日本はもとより、世間の関心がひどく薄い。
 そのことと無関係ではないように思えてくる。
 そう、あのルアシもだ……。
「それに、あのルアシって子も気になるよな」
 まるで同じことを考えていたかのようにトモヤがつぶやく。
 レンは顔を上げて「ああ」と頷いた。
「ただのモデルじゃないはずだ。スーパー・モデルどころの存在じゃない。確実に見覚えはあるんだ、なのに思い出せない」
 うなるトモヤを見ながら、さすが俺の相棒だ、とレンはニヤリと笑った。 
「それより、あの時奪ってきたドラマのカメラテストとリハーサルの録画データを見ようぜ」
 レンは、撮影日の日付が書かれた「ホスト・ラグ」と書かれたデータをテレビにセットした。
 危うく持ってくるのを忘れるところだった大事な記念品。
「俺だけの宝物だからな」


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